掃除機調査ドキュメンタリー
目次
企画設計フェイズ bookmark
クライアントからのご依頼~企画のプレゼンテーションまで。
弊社スタッフの業務を追っていきます。
1st コンタクト bookmark
9月某日、弊社営業兼分析担当、「石原」がクライアントから電話を頂戴した。

今回の調査案件は掃除機である。掃除機の中でも『サイクロン式掃除機』という今後需要が伸びそうな製品カテゴリにおける調査である。
と思ったのも束の間、サイクロン式掃除機は楽観できる状況にないようだ。
クライアントは、国内大手家電メーカー。最近は派手なデザインと強烈なCMで鼻息の荒い海外掃除機に脅威を感じているという。
紙パック式から世代交代となるはずのサイクロン式掃除機も吸引力という点ではかなりの高性能である。しかしフィルタの掃除をしないと吸引力が大幅に落ちるなど、使いづらさも目立っているようだ。
またその辺を解決するには様々な特許の問題もあるようだ。
詳細にお話を伺うことになる。
弊社では、多数の一般消費財、耐久消費財、サービスなどについての市場調査を請け負っている。
その中には当然ながら様々な家電製品も含まれるが「サイクロン式掃除機」という商品についての調査実施経験はない。石原個人としても請け負った経験のない商材である。
日頃さほど掃除機に強い縁のない石原としては、ヒアリングは慎重になる。
しかし、我々、市場調査会社としては常に精通した商材やサービスだけを扱うわけではないので、そうも言っていられない。
不慣れな、あるいは初めての商材やパターンを扱うときの手順は以下の通りだ。
- 可能な限りクライアント(つまり最もその商材やサービスに詳しい人)から情報を得る
- 弊社の保有するDBを漁る
(Zeusプロジェクトdbという大げさな名前で呼ぶ。kabayakiというインテリジェント・エンタープライズ・サーチを窓として社内の過去のデータである企画書、見積書、報告書などを厳重管理のセキュアサーバーでサーチすることができる)
- ネット検索を行う
- グループワーク/ディスカッションで知見を収集、意見を集める
要するに「3人寄れば文殊の知恵」方式である
- 上記グループワークに参加している以外のメンバーに問い合わせを行う
が最初のステップと言えよう。
グループワーク、グループディスカッションを行うために、できるだけクライアントから詳細な情報を頂いておく必要がある。
そのために我々にはMTプロジェクト管理シートなる、まさにカルテとも言えるドキュメントが存在する。元来はプライバシーマーク制度の管理上の目的で作成された個人情報の有無をプロジェクト単位で管理するためのシートである。
その概要項目は以下の通りである。
- まずなんと言っても「調査目的/背景」である
これは必ず聞いておかなければならない。具体的である必要がある。
「今後の開発の資料とするため」等ではダメであるが、長々としたものでもいけない。端的で具体的な目的にならなければクリアとは言えない。調査目的をクリアにするのはクライアントの仕事ではない。背景や希望などを聞き取り、こちらで最終的にシンプル&クリアにまとめてあげる必要がある。
- 我々で調べれば良いかもしれないが、できれば業界情報や製品の動向など業界の人でなければなかなかわからない情報もできるだけクライアントの口から聞いておきたい。最初のコールで全て聞く必要もないが。
- 概ねお電話を頂戴した方が主担当だとは思うが、最終的には誰にプレゼンすべき調査なのかを押さえておきたい。どなたに向けてなのかが分かれば概してピント外れな提案をすることは減るだろう。
- 弊社が行うべき業務の範囲もできるだけ明確にしたい。
これもまだ最初はおぼろげかも知れない。しかし想定するのは最終的なアウトプットがどこまでかは瞬時に判断または、確認する必要がある。
- 実施時期、つまりアウトプット納品日までのタイミングプランである。
これは非常に重要である。我々もパワーは有限であるし、クライアントにとってもデッドラインは必ずあるはずだ。実行の可否や実施できるレベルや内容も変わってくることがある。
一応、プロジェクトシートに書き写す形で、ヒアリングを行った。
- 【背景/目的】 サイクロン掃除機は今後の主流となる存在であるが、自社の製品は海外のものに比べてやや機能、デザインともインパクトに欠ける。
次の製品はどのような機能特徴を前面に出したものにしたら良いのだろうか。
- 【業界情報等】 クライアントで今後生かせる技術や機能は、
である。- 花粉までとれる掃除機(花粉に強い)
- 低音
- 消臭除菌機能付き
- マイナスイオン発生
- 酸素が出る
その他の情報については、予備知識が足りずどのようにヒアリングしてよいやら・・・という感じでうまく聞き出すことはこの時点ではできなかった。(後でヒアリングしていくのでも充分間に合うであろう)まずは、社内グループディスカッションに臨むための予備情報を探す指針程度の情報は得られたので良しとした。
- 【担当者】 主たる担当者はお電話を頂戴しているご本人のようである。多くの場合その先に最終的な社内プレゼンを受ける上司や部門が存在することが多い。
そこで、「その先のご担当者様は?」と聞くのは、あまりにも不躾であり、そのようなことを聞くことはできない。
なぜそのようなことを聞く必要があるのかというと、無論、最終的に報告を受ける人や部門の意向にできるだけ沿って、適切な調査を設計していく必要があるというのもあるが、例えば開発部門であれば、調査手法の詳細な話や調査の技術的な話はそれほど深く行う必要はあまりないであろう。
しかし、調査部門やマーケティング専門部門、調査目的自体が学問的探求のためなどの場合はややその辺りを用意しておく必要もあるだろう。
というのが一応の手順であるが、どうやら今回は、弊社としてはよくお受けするパターンで、マーケティング担当者が主窓口で、開発部と共に調査を行っていくようである。
- 【業務範囲】 通常、クライアントから調査目的や背景をお聞きする形の調査では、『調査の企画設計』、『実査』、『データ処理』、『分析・報告』の全てが業務範囲となる。おそらくクライアントも弊社で言うところの業務範囲を意識していないケースも多い。
どのような業務範囲が有り、どのように実施していくのかを説明して理解していただく必要がある。
今回の業務範囲は、全て、つまり『企画~報告』までの全てである。石原としては特に確認する必要もなかった。一点クライアントに確認させて頂いたのは、最終的な報告、つまりプレゼン形式が必要かどうかである。プレゼン形式の場合、当然ながら複数名の担当者やその上司が一堂に会する可能性が高い。- 『企画~設計』とは、調査の目的を達成するために、どのように調査を構成し、誰に調査を行うのかを決定し、質問を作成、どのような調査手法を使い、どのように実査を行い、そしてアウトプット表現をどのように行うのかなどをプランニングすることである。
通常、この『企画設計』が調査を行う上でも最も重要であり、最もエネルギーを使う部分である。当然ながら高い企画力や洞察が求められる。特に調査票の作成はその中でも最も慎重に実施されるべき調査の心臓部である。
- 『実査』とは、実際に計画に沿って調査を実施することである。調査票をWEB化したり、印刷したりに始まり、実際に対象者をサンプリング計画に則ってリクルート後、メール配信やインタビュー、座談会や郵送調査などを行い情報を収集する過程である。
ここで重要なのは正確さである。計画を実行する上で大切なのはその設計図に正しく従っていくことである。
調査票のWEB化や印刷原稿の作成の段階で質問の改良が加えられたりすることは日常茶飯事であり、そうした意味では実査段階の初期は『企画~設計』の連続した一部であるとも言える。
弊社では特にWEB調査票の作成技術には自信を持っており、かなり複雑かつ高度な調査票画面作成を行うことが可能である。さらに単に複雑というだけでなく、ユーザーフレンドリーな画面工夫を行っている。
- 『データ処理』は実査で収集されたデータを加工し、集計したり、解析したりする作業である。
ここでもやはり正確な作業が求められる。集計段階ではちょっとしたミスや勘違いでアウトプットが簡単におかしくなってしまう。
弊社では、過去の痛い集計ミスの体験から『集計アウトプット・チェックリスト』を使っての確認、及び別の作業者による二重確認の体制を取っている。
また、どんなに人によるチェックを行ってもミスが完全になくなる確率はゼロにはならない。よって弊社の得意技でもあるIT活用により、なるべく機械化を行うようにしている。
また、データ処理の終盤ではある程度の範囲でクライアントへ結果のリークを行うことが多い。それはできるだけクライアントは早く結果を知りたい、そして安心したいという心理があるのでこれに応えるためである。またできるだけ早く対策を打つことも可能になるからである。
- 『報告・分析』は、最後の締めと言える部分である。クライアントはここに重きを置いているかもしれないが(当然と言えば当然である)、実際は上記のデータ処理の段階で概ねの内容は伝えてしまうことが多いため、ある意味演出要素が強くなるが、やはり詳細に伝えていくには報告書にまとめたり、結果の報告を行うことが必要になることが多い。
弊社では、クライアントを無駄に驚かせるようなアプローチは極力避けるように徹底している。従って報告書を受け取って、あるいは説明を弊社スタッフから聞いても大きな感動(?)はないかも知れない。
その場合、できるだけ参加される方々に上記の情報『リーク』を行っておきたいからだ。
何を聞かされるのかわかったものではないプレゼンでは、よく事態が紛糾したりすることがある。
これではご依頼いただいた担当者の方の顔を潰しかねない。 - 『企画~設計』とは、調査の目的を達成するために、どのように調査を構成し、誰に調査を行うのかを決定し、質問を作成、どのような調査手法を使い、どのように実査を行い、そしてアウトプット表現をどのように行うのかなどをプランニングすることである。
- 【タイミング】 タイミング、つまりスケジュールは弊社でも頭の痛い難しい部分である。クライアントは、一定の時期にどうしても結果が必要な場合がほとんどであり(当たり前だが)、その期間内にできるだけ高いクオリティで結果を望んでいる。(これも当たり前である)
しかし、クオリティやボリュームと期間は反比例しており、正確に実施して行く上で、時間は最も貴重な資源の一つである。
できるだけクライアントの意向に沿いたいが。。。。この難問の答えはない。
ただし、どうしてもできないことについては、まさに「リーズナブルな」理由によってクライアントに納得していただく他ないだろう。方法はいくつかある。
どちらも有効な方法であるが、通常は2番目の方法をお勧めする。- 優先度の高いと思われる結果から五月雨式にあげていく
- 調査のボリュームをコンパクトにする
なぜならば本当に調べなければならないことは、それほど多くない。ネット上に既にあるかもしれないし、クライアント会社のデータベースにあるかもしれない。あるいは別の部門が同様な調査を既に行っているかも知れない。本当に調べる必要があることを吟味し、調査をコンパクトにすることはスピードアップとコストダウン、目的達成のクオリティアップと良いところばかりであるからである。
もう一点、注意しておくべきことがある。タイミングを考える上である程度のバッファーつまり予備日程を余裕をもって用意しておくことは非常に重要である。調査計画を実査に移す段階で多かれ少なかれ何かと変更やトラブルは発生するものである。あまりにタイトな日程を組んでしまうとリカバリーが難しい事態に陥るからである。(まあ当たり前のことばかりで恐縮ではあるが、時間は何故かどんどんと無くなっていくのが不思議である)
今回は、調査全体としてはテーマの大きさに比べて期間はやや短い。無論、強力なIT化によって飛躍的に調査全体の期間は短縮できているが1月程度で結果を出す必要があり、ややタイトであることが分かった。ただし、最終報告は上記の期間とは別の機会にて行う形となった。
できるだけクライアントの意向に沿うのは言うまでもないが、どうにも期間内に達成が困難なこともある。その場合は優先度を付けて、最も重要なものから結果を出していくということも考えられる。
今回、弊社の担当は全容把握がまだできていない段階でのスケジュールの可否についての名言は避けたようだ。
最初のヒアリングとしては、あまり慣れていない商材ではあるが、特に問題なく聴取できたようである。
以上の情報を元に、弊社営業担当の石原は、社内DBやネット、そして非常にアナログではあるが、社内の同僚(特に女性陣)に掃除機についての知見収集活動を行った上で、最初の社内ディスカッションを招集した。
1st 社内ディスカッション bookmark
それぞれの参加メンバーに、今回の概要を簡単にまとめた内容をメールにて配布、調査企画の検討を要請した。
弊社はさほど人数が多い会社ではない。よって個々のメンバーも多忙な状況が多いので効率よくミーティングを行う必要がある。
全員が参加するような必要はないが、小規模企業としてはできるだけ、たくさんの頭脳があった方がブレストにしろ、アイデア出しにしろ網羅性が高まる。

聞き取りシートによりクライアント要望を詳細に聞き取ったので今度はその内容をメンバーに配布した。
明日のミーティングに向け参加メンバーは自分なりに調べたことや事実から推測できる意見などをあらかたまとめてくるはずである。
このように初回の社内ミーティングまで時間がないことは頻繁である。
ミーティングで各自のもちよった所見や資料を検討する。
クライアントからの希望要件に加え、まとめると以下のような所見が挙がってきた。
- 普及はしつつあるが満足度は低い
- さほど吸わない
- ロボット掃除機に押され気味
- メリット:吸引力が強い、紙パックが不要
- デメリット:掃除機の掃除が大変、うるさい、重い、高い、CMで言う程強力ではないのでは?
ポロポロと挙がってくる意見をまとめて本日のミーティングの押さえどころや疑問点をまとめた。
【調べること】
- 新しい機能に対する需要性
- シェアアップも大事だが、新しい機能を追加することによりどの程度利益を出すことができるか
- なぜ売れているのか?
- そもそもどんな掃除機が受けているの?
- 他と比較して何がいいのか?
- 話題性(例:海外製品の印象が強い)
- インパクトのある商品
- 広告量も多いから?
【本題】とすべきは???
- どういう商品を作ればよいのか
- シェアアップよりも高利益型商品の開発
- 満足・不満足の点を検証
とりあえず、ここで石原が持ち帰り、まとめて検討することにした。
続く。
